御会式

日蓮大聖人が亡くなられた十月十三日に前後して行われる法要が「お会式」であります。宗祖大聖人のご命日に合わせて、みんなで集まり、報恩感謝の気持ちと共に、お経やお題目を唱え、改めて大聖人の教えを強く心に刻み込むための行事です。

日蓮大聖人は、弘安五年(一二八二年)十月十三日午前八時頃、東京の池上の地において、六十一歳で入滅されました。その場所こそが、今の池上本門寺(東京都大田区)であり、盛大なお会式が営まれることでも有名であります。江戸時代には、既に江戸を代表する大きな行事になっていたようで、現在でも三十万人を超すほどの人出で賑わいます。

また、池上本門寺に限らず、日蓮宗の各寺院でも、お会式が大きな年間行事の一つとして、檀信徒の皆様に親しまれていることは言うまでもないことでしょう。そもそもお会式という言葉は、法会の儀式を略したもので、お経を読んだり説教を聴いたりする集まりのことであり、仏教各宗派で使われます。

しかし日蓮宗では、お会式とは日蓮大聖人の命日に行う法会を指し、大聖人はもとより、私達を教え導いて下さった、様々な先師に感謝する日となっています。このお会式の付き物として有名なのが、「桜の花」と「万灯」であります。

「桜の花」は、大聖人が入滅された時、その近くにあった桜までもが、季節外れだというのに満開になり、人々と一緒に嘆き悲しんだという言い伝えに由来します。お会式に合わせて桜の造花が作られお寺に飾ってあるのを、一度は見られたことがあるのではないでしょうか。

もう一つの「万灯」とは、たくさんの灯りをともして、仏様や菩薩様の供養を行うという意味を持っています。お会式の時も、人々が大きな灯りを持ち、高く掲げて、日蓮大聖人の遺徳を讃えてお供えをするのです。

池上本門寺のお会式が有名になったのは、その「桜の花」と「万灯」の美しさからでもあるようで、いつの頃からか、錦絵や紋の描かれた大きな提灯に桜の造花を飾ったものがみられるようになり、現在では様々な色の電球で豪華に彩られたものになっています。

さらに万灯の光に合わせて、笛や太鼓でお囃子を鳴らし、火消しの纏を振り、本門寺までの参道を練り歩く万灯講の存在が、池上のお会式を特別なものであると強く感じさせてくれます。

本門寺にお参りなされる方は、この本場池上独特の、明るく賑やかで迫力のあるお会式を、沢山の人と一緒に、目でも耳でも楽しむことができるでしょう。

お会式では、「桜の花」「万灯」がどうしても目立ってしまいますが、もう一つ大事なものがあります。それは、檀信徒の皆様がお参りをし、お供えをされるお線香(お香)であります。仏様が最も喜ばれる、香・華・灯の三つのお供えを、いつでも忘れずに揃えたいものです。

日蓮大聖人は、仏様の大切な教えを沢山の人に伝えて、幸せになってもらうことを喜びとされました。皆様の菩提寺のお会式の日には、是非お参りをし、お線香をさしあげて、日蓮大聖人に、また皆様のご先祖様に、「しっかり教えを守っていますよ」とお伝えし、喜んで頂きましょう。